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九四式三十七粍戦車砲は独Ⅰ号戦車の砲塔後面装甲板を貫徹できない?

昨今、ゲームや映画の影響で某海軍さんの艦艇や航空機が流行のようですが、個人的には花のある空や海よりも地べたを這いずる回る方が性に合っているNyarlathotep_44です。

今年の夏はC84、所謂「夏コミ」に行ってきまして、様々な貴重な資料(その紹介とレビューは近々したいですね)を手に入れてきたのですが、そのついでに九段坂の偕行文庫へ行ってきて色々調べ物をしていましたところ、九四式三十七粍戦車砲(九五式軽戦車や九七式軽装甲車の主砲)に関する面白い資料を一つ見つけましたので、その報告をさせていただこうと思います。



さて、本題に入る前に一つ、この話に至る経緯を紹介しないといけません。
それはとあるサイトの記事にあった「旧陸軍の鹵獲独製Ⅰ号戦車」についてのページの最後にある「○○式三十七粍戦車砲によるⅠ号戦車への射撃試験」の結果についてのお話です。

一応補足しておきますが、ここで出てきた独製Ⅰ号戦車は、別にドイツと日本が直接対決して鹵獲したわけではなく、中華民国軍が日中戦争直前にドイツから輸入した戦車の一部である「Ⅰ号A型戦車」であると思われます。
このⅠ号A型戦車は日中戦争で全車が撃破、或いは鹵獲されており、今回試験に供されたⅠ号戦車の砲塔も、その時に鹵獲されたうちの一つだと言えるでしょう。

ともかく、そのサイトには一枚の写真が掲載されており、○○式(○○は資料上でそう書かれているので形式は不明です)三十七粍砲での砲弾が超飛(貫徹せずに跳ね返された状態)された後が残るⅠ号戦車の砲塔後部の写真が掲載されていました。それが以下の写真です。

BIfcXtgCUAAYZ1a.jpg

一号A型戦車の砲塔は後面で13mm厚の装甲板で、その部分は約50~75度の傾斜を掛けられていますが、正撃(物体に対して直角の角度で徹甲弾が当たること)であれば、対戦車用として利用される37mm砲の徹甲弾なら十分抜けてしまう数値だと思われます。それが抜けないとなると勿論大きな問題となってしまうのですが……

これをもって、サイト主は「九四式三十七粍戦車砲はⅠ号戦車を貫徹できなかった」という意見で〆られているのですが、私としては九四式三十七粍戦車砲の貫徹力の事を考えると少し気がかりに思いつつ(そもそもなんで九五式軽戦車ならびに九四式三十七粍戦車砲と断定できるのだろうと考えながら)も、手元にその意見を覆せるだけの参考となる大本の資料が無かったので実質放置状態でした。

そこで今回見つけた資料発見の話です。
その資料を以って、この話題について検証を行うことが可能となったので、今回は九四式三十七粍戦車砲の解説を軽く行いながら(本題の試験結果だけ気になる方は該当箇所までお飛ばしください)小話を進めていこうと思います。





ではまず、今回の試験で使われたであろう九四式三十七粍戦車砲について軽くお話いたしましょう。

九四式三十七粍戦車砲は、元々試製重戦車(九五式重戦車)の副砲として開発されたもので、昭和九年二月に研究を終了し、昭和十一年二月に制定発布された「九四式三十七粍砲」をベースに開発された戦車砲です。

元の九四式三十七粍砲は対戦車戦用に開発された速射砲(対戦車砲)であり、その貫徹力は約350mで約30mm、約800mで25mm、約1000mで約20mmの鋼板を貫徹することが可能で、当時としては平均的な対戦車砲の性能を持ち合わせていました。

その九四式三十七粍砲を九五式重戦車の副砲塔に搭載するためにこの砲を砲身長を約10口径ほど短くし、薬室を縮小して(そのためか、九四式三十七粍戦車砲の砲弾は薬莢長が30mmほど小さくなっています)直接照準操作式(砲手が肩当てを用いて直接上下左右に動かす事で照準の微調整を行える照準操作方式)ものが、この「九四式三十七粍戦車砲」です。

九四式三十七粍戦車砲は、九五式重戦車だけでなく、同時期に開発されていた試製小型戦車(後の九五式軽戦車)にも搭載され、射撃及び運行試験を行い、その後昭和十年八月に制定発布されています。

本砲は九五式重戦車、九五式軽戦車だけでなく、九四式軽装甲車の一部の車両と、その後制式化された後継の九七式軽装甲車に装備され、中国戦線・太平洋戦線共に戦車隊・歩兵連隊を支える重要な火力の一つとして重宝されていました。

そんな九四式三十七粍戦車砲ですが、実際の細かな貫徹力に係わる数値は未だに不明です。しかし「九四式三十七粍戦車砲仮制式制定の件(Ref.C01001356100)」では目立った記述が見られないことから、恐らくは九四式三十七粍砲とそこまで大きな差は無かったものなのだろうと思えます。
それを裏付ける話としては、私は未確認なので詳細を話すことが出来ませんが、ノモンハン事件に於いては主に500~700mの距離でソ連戦車を撃破し、最長では1500mで撃破したとの戦車第四連隊の報告が存在するようです。




さて、九四式三十七粍戦車砲の解説についてはこの辺にしておくとして、それではそろそろ本題のⅠ号戦車での射撃試験の話について触れたいと思います。

以前はⅠ号A型戦車の砲塔を九五式軽戦車にて射撃試験をしていると思われる資料が見つからず苦心していたわけですが、今回偕行文庫で見つかったのはその「大本の資料」です。同じ資料を見ているので、恐らくは資料の違いによる記述等の違いは無いものとして見ていいでしょう。

その資料は「機甲」の昭和十七年四月号に掲載された「速射砲戦技向上の一、二に就いて」というコラムで、執筆者は「騎校○○隊」とありましたので、恐らくは騎兵学校の関係者による執筆かと思われます。
その後半に参考資料としてか「実験射撃計書」という内容で当該試験の要項と結果について記され、その最後のページに「別紙」として問題の写真を含む3枚が掲載されていました。

そこでまず最初の疑問である「何故○○式軽戦車が九五式軽戦車と断定できるか」ですが、これは執筆者が「騎校○○隊」とあることから断言が可能でしょう。理由は、当時騎兵隊に配備された軽戦車は九五式軽戦車ただひとつであり、時代的に考えてそれ以降の軽戦車はあり得るとは考えられないからですね。
付属で車載機関銃が設置されてる点も、他の豆戦車・軽装甲車とは違うことを断定できるかと思います。(豆戦車・軽装甲車で車載機関銃と37mm戦車砲が同時に装備されたものは無い)
九四式三十七粍戦車砲と断定できる理由も同じ理由であると言えます。

話を本題に戻します。Ⅰ号戦車砲塔への徹甲弾射撃試験は砲塔を土のうの上に乗せて約400mと300mで分けて行ったもので、400mで2発、300mで3発の射撃を行い、その結果を記したものです。余談ですが、この射撃は堀江曹長が行ったものらしいです。

さて、その結果としては、400mだと2発中1発命中、300mだと3発中3発の命中弾を記録しています。
Ⅰ号A型戦車の砲塔は、直径約1.1m、幅にして30cmちょっとしか無いようなので、その小ささの的にこの命中率は、射手の練度も考えるとかなり高いほうだと思われます。


そして問題の命中結果ですが、確かに400mで当たった徹甲弾は超飛、300mでは3発中1発が超飛を起こしています。
しかし、今回の問題は一般的に言われがちな徹甲弾の質や貫徹力不足ではなく、その撃角にあったようです

問題の超飛を起こした弾は、命中角の項目を見ると全て60度というかなりキツイ傾斜角で直撃しています。この命中角は精度が悪かったというよりも、砲塔のサイズを考えるとやむを得ないものかもしれません。
そして13mmの約50~75度傾斜した装甲板に60度の命中角で直撃した徹甲弾は、計算すると約40~100mmの装甲板を抜くのと同じ計算になり、場所によっては100mmの装甲板を貫徹する威力が必要になると考えると、九四式三十七粍戦車砲どころか、当時のどの37mm対戦車砲でも貫徹することが難しい結果になってしまいます

ちなみに、ドイツの有名な37mm対戦車砲「3.7cm Pak36」は、通常徹甲弾の「PzGr」だと30度の角度がついた装甲板を500mで29~30mmを貫徹できるそうです。計算結果を見る限りだと、ドイツでも最薄部を抜けるか抜けないか分からない厚さになるみたいです。
九四式三十七粍戦車砲はそれよりも貫徹力が劣ってしまうので、結果として抜けなかったのは当然なのかもしれません。



では、300mで試験した際の残り2発の命中弾はどうなのでしょうか?
実はこの2発はうまいこと命中角が直角になって徹甲弾が入っています。実は、その結果が最後の「別紙」に掲載されていた3枚中1枚の写真に入っていました。
それがこちらです。

img004d.jpg

(コピーした紙のスキャンなので見難いかもしれませんが)左側で徹甲弾が見事に貫徹しています。小さな跡は砲弾が命中した際にリベットが弾けて破壊された跡で、弾が貫徹した穴ではありません。
試験結果によると、この時命中した弾は「命中弾は命中瞬時閃光を発し、次で砲塔内より煙の噴出するを認めたり」とあり、貫徹後に徹甲弾の内部に含まれた炸薬が起爆して、結果内部で煙を吹き上げたものかと思われます。

この資料を持ってすれば「九四式三十七粍戦車砲の貫徹力は決してⅠ号戦車を抜けないほどに劣っていない」という証拠に十分なるかと思われます。

ちなみに白い点みたいなのは車載機関銃の徹甲弾にて射撃試験の際に、弾が命中して塗装が禿げた後です。ちなみに、こちらは貫徹はしませんでした。

以上の点を踏まえると、個人的にはⅠ号A型戦車への射撃試験を資料として九四式三十七粍戦車砲が劣っているとするのは少々強引な話などころか、資料のミスリードを誘っている点が多く山積されるのではないかな、と愚考せざるを得ない今日此の頃なのでした。(終)




※余談

この試験は榴弾でも行われたようで、Ⅰ号A型戦車に向けて300mで2発の37mm榴弾を射撃しています。そのうち1発の榴弾が30度からの角度による命中弾を出し、その結果が写真でも残されていました。
それがこの資料に残された3枚中最後の写真です。

img004e.jpg

試験結果によると「甲板一部破壊し、四隅の窓を開扉せり」とあります。見たところ装甲の一部がぐちゃぐちゃになっており、恐らく爆風が貫徹したのではないかと思われます。
この頃の装甲板だと小口径の戦車砲の榴弾でも十分に対装甲威力があったのでしょうね。

ただし、試験結果としては榴弾でも効果を認めるとするも「射程の影響は更に検討を要す」とあるので、やはり榴弾だと中距離以遠に当てられないのが問題ともなったようです。




※参考文献

・機甲 昭和十七年四月号 「速射砲戦技向上の一、二に就いて」
・日本陸軍の火砲 歩兵砲 対戦車砲 他 (佐山二郎)
・九四式37糎戦車砲仮制式制定の件(Ref.C01001356100)
・ストライクアンドタクティカルマガジン増刊 2010年11月号 日本陸軍の戦車 (株式会社カマド)

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No title

まずいくつか指摘させて頂きます。
94式37mm戦車砲は89式戦車の一部等に搭載された狙撃砲(11年式歩兵砲とは別の砲です)が色々と問題を抱えていたため、主に戦車砲としての使い勝手と他の37mm砲との弾頭の共用を目的に開発された砲です。
徹甲弾弾頭は94式37mm砲、11年式平射歩兵砲と共通ですが薬莢はどちらとも互換性がありません。

さて、400mで13mmの鋼板を貫徹可能か、という話ですが、これは管理人様と同意見です。
正撃なら可能だが斜撃になると厳しいと思われます。

94式37mm砲との初速度差により貫徹力は劣っています。
だいたい350m飛んだときの94式37mm砲の弾速と94式戦車砲の砲口初速が同じ。
で、件の約400mでの貫徹力ですが、94式37mm砲の800mでの貫徹力が25mmですからこれと同等かやや上回ると見て間違いありません。
ただ、断面図を見ればお判りのとおり、94式徹甲弾は構造的に割れ易く、また1式徹甲弾等より弾尖の部分が長い上にあまり太らせていないため、斜撃が苦手な形状です。滑りやすい上に砕けやすい。
お題の例では、正撃から30度傾斜した状態ではこれらの条件が重なって不貫という形になったものと推定されます。

まあ、ご紹介のサイトの記述ですが、ウソとも言い切れないです。実際に貫徹しなかったのは事実ですし。
斜撃での貫徹力も性能の内ですから、性能が低いという言い方もできるのではないかと。
当然、それが全てではないわけですが。

コメントありがとうございます

どうもブログ主です。お手数掛けていただいてわざわざすみません。

>>九四式三十七粍戦車砲の開発経緯・弾薬・弾薬筒の話
確かに九四式三十七粍戦車砲は改造狙撃砲の更新についても考えて開発された可能性があるとは思いますが、今回は戦車砲自体の解説を長々行うのを避けたかったので、さらっと流す程度の内容で留めてあります。
ただ、確かに内容として間違っている・誤解されやすい部分もありますので、その点が後で増強改定を行っておきます。

>>九四式三十七粍戦車砲の初速について
申し訳ございません、完全にその点の記述が書いたつもりになってて中抜けしていました。後で増強改定を行っておきます。

>>九四式徹甲弾の砲弾構造
今回は砲弾が命中後に砕けたわけではなく、超飛しただけの話なので内部構造に関する問題はそこまで重視する必要はないと思われます。
九四式徹甲弾の蛋形砲弾に関しても、当時のAPとしては極普通の形状であり、例えば米37mmM3砲の徹甲弾であるM74 AP-Tも同等の形状をしていますので、恐らくは今回の試験と似た(× 同じ)状況下になれば、大体のAPで起こる普通の現象で収まると考えていいでしょう。
それを鑑みて言えば、今回の問題については日本独自に抱える問題ではなく、似た状況下で有ればどの砲でも起こりえるため、敢えて比較するならば概ね各砲の一般的な徹甲弾での貫徹比較(貫徹可能幅への命中率は各37mm砲の半数必中界が不明なため検証不可)で済む問題と考えています。

個人的には被弾箇所が海外の同規模の37mm砲でも結構厳しい箇所に思えますので、やはり九四式三十七粍戦車砲の弱みとするにはいささか証拠が足りないと思う点が多いように考えています。
しかし、後々見直すと結構中抜けや読みにくい文章が多く、全体として荒い点が散見されますね。そういう意味では今回指摘された点を含めて、後日柔らかめに訂正していきたいと思います。
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